ロベール・クートラス展 松濤美術館

見てよかった。面白かった。

麻布にある小さなギャラリー(オーナーが、このクートラスについて熱心に取り組んでおられる)で何度か見たことがあって、そのときは、ああ、このひとは自分の作った王国の中に密やかに暮らしているひとなんだなあと思って、とても素敵だけど、ちょっと近寄り難いような気持ちで鑑賞していたのだけれども。
でもこうして、たくさんの作品が一同に介しているのを見てみたら、いや、もっとゆるやかに世界と結びついて、それを楽しむ気持ちのあったひとなんだなあって気がした。小鳥が謳う姿や、酔っぱらいじみた老人の横顔や、窓辺にたたずむピエロのうちに小さな奇跡を見いだして、それをもういちど自分の手でつむいでいくような、そしてその楽しみを見るひとと分かち合い、できることならそれで生計をたてていきたいっていう欲もあったんだろうなっていうような、そういう、きっと本人としては、わりに開かれた喜びに彩られた制作をしておられたのじゃないかなと、なんだかちょっと、今までより楽な気持ちで見ることができた。
けっこう混んでて、そしてびっくりしたのだけれども、無料だった。