すてきな 三にんぐみ

『すてきな 三にんぐみ』トミー・アンゲラー いまえよしとも/やく


強いなあ…。

三にんぐみのシーンは、ほぼ黒・青・赤・黄の、印刷の基本色(…いや、実際には青というより紺だから、基本色って書くと嘘になるんだけど)のみで表現され、ページは、だいたいにおいて闇の中。

前半、どろぼうのシーン。ここがお話全体をもりあげ読者の気持ちをつかむスリリングなパートになるんだけど、色彩的にも、色の大胆な配置がリズミカルに繰り返されて、文を読まなくとも、絵を仔細に見つめなくとも、色を眺めるだけで気持ちが高揚してくる。

どろぼうじゃない、ふつうの人が登場すると色彩が豊かになる。三にんぐみの生活に指針と希望を与えてくれる少女ティファニーちゃんの登場でどろぼうたちのページも色づき、昼間のシーンも出てくるのだけれども、さいごのページ、三にんぐみがつくった村の描写はやっぱり闇の中。

さいごのページが闇であることによって善なるものだけでなく、弱い心、悪い心に対しても、深い肯定が示される気がするる。
このページの闇を想うことで、自分自身の心も、どこかがほろっと溶けるのだ。

見返しの色が黄色なのにもいいですよね。