『なかないで くま』

『なかないで くま』フランク・アッシュ 作絵


わあ…この絵本は…好きだ…
心の一番やわらかくて弱いところをきゅっとつかまれる。


よく見ると気持ち悪いくらいの細密画なんだけど、この絵がなければ成り立たない…というか、こんなにも文章と絵が、同じ場所から同じように同じ体として生まれてきたであろうものに、どちらかがなければ成り立たないなんて、そんな言い回し自体がおかしい気がする。


うまいのか下手なのかよくわからないけど、とにかく繊細なくまくんの目の表情やポーズや、背景に書き込まれた文様に、それらが何故こんな表現をされているのか、何故こんな描写をなのか理屈ではよくわからないんだけど、でもそうしなければならない圧倒的な衝動があったのだろうと、これが正解なんだと、絵を眺めるごとに説得されて、胸がしめつけられる。月が欠けていくのを体を細らせてまで心配するくまくんに「ああ、そんなに心配しないで」と心が痛む。だけど、心配する必要はなかったのだと知ってしまったくまくんが、前よりもっとせつない。
誰かのことを純粋に想うこと、その根源的な核の部分だけを取り出してかたちにした絵本だと思う。

すごい一冊だな。