『とんことり』筒井頼子 作・林明子 絵

『とんことり』筒井頼子 作・林明子 絵


林明子さんの絵の魅力って、もう本当にいろいろな点が素晴らしくて、しかもそれが、だれが見てもわかる素晴らしさだってとこもまたすごいんだけど。
現実の世界から本の中にふわりと降り立ったようなリアルなこどもの存在感も、生活が匂いたつような街並みもほんとに美しくて素晴らしくてため息がでるのだけど、でも一番の魅力は、どのページも、どんな暗いページにも陽の光を感じることかもしれない…と思う。
やわらかくて温かい日差しが、どんなページにも差し込んでいて、いや夜の場面ですら、昼間そこに陽があたっていたことを感じさせてくれるのだ。それを見ることが心をしあわせにしてくれる。


…て思ったんだけど、近代文学館でやっている角野栄子展で『魔女の宅急便』の1冊目の挿絵(1冊目だけ林明子さんが挿絵を描いているもよう)を見ていたら、モノクロの描線の躍動感と力強さと、そのうえでかもしだされる物語性に惹きつけられてしまった。陽のささないモノクロの世界でもこんなにもいきいきとしてすてき。個性が強いのにとにかくオーソドックスで、軽やかな重さがあって、硬くて柔らかくて。とにかくうまい人なんだなあ…