冬の運動会

録画しておいた「冬の運動会」を見た。
向田邦子ドラマといえば久世光彦演出のTBS。というのが一般的(?ちがう?)ならしいけど、私自身はお正月に毎年放送される向田ドラマは見たことがなくて、思いおこすのは子どものころに見た、岸本加世子と杉浦直樹が出演していたNHK制作の朗読ドラマだ。確か「思い出トランプ」だった。・・・なにかとあわさって記憶がごっちゃになっているだろうか?気が利かない貧乏臭い愛人のもとに通う男の話や、魚屋の御用聞きがよっぱらって家の犬小屋で寝ていた話(記憶、あっているだろうか?)。淡々としているし、登場人物は皆さえない。子ども心になにか感じるところがあったんだろうか?と不思議だけど、とにかく印象深く残っている。
ところで「冬の運動会」の菊男は、岡田准一くんによく似合っていると思った。
岡田くんに興味を持ったのはドラマ「木更津キャッツアイ」の宣伝で王様のブランチに出演したのを見たときがはじめてで、そのとき話をしているのを聞いて、一聴すると深そうなんだけど、その実浅いことを言うひとだなあと心に残った。悪い意味じゃなく。なんとなく、本心をさとられないようとても注意深くしゃべっているのかなという気がして、それが、狡さとか小心さとか、あるいは小賢しさをあらわしている感じがして。そういうの、嫌いじゃないものだから。いや、芸能人のことだからさ。実際はどんな人かなんて、一生わかんないけど。でも、とにかく興味深く思った。
カミセンのほかのふたりがとてもユニークな存在感を持っているので比較してしまって尚更そう見えるのかもしれないけど、岡田くんはいい意味でも悪い意味でも、普通のひとに見える。普通にずるくて、普通に弱いひとに見える(あんなに綺麗で派手な顔しているのに)。
菊男は、いわゆるモラトリアムの若者で、親に甘えているのに自分でそれに気づいていない。うまくいかないことをすべて親のせいだと思っている。普通の、どこにでもいる、悩み多き若者だ(大学4年生の割には、行動が幼すぎるきらいはあるけど)。
その普通にダメな感じが、岡田くんに、よく似合っていた。
本宅の居間に妙な向日葵の絵がかかっていたのは、なにかの象徴のつもりだったのかな?変な絵だった。
とてもリアルだなと思ったのは寺島しのぶで、彼女自身の存在感もそうだけど、住んでいる部屋の設定がとてもいいと思った。絵を描くああいった雰囲気の、植木等のような男性を恋人に持つ女の人が、谷中や根津(?たぶんそのあたりなんじゃないかな)あたりの古い家に、あんなふうに実際住んでいそうだもの。
「絵を描く愛人」という言葉から安易に連想されるような部屋じゃなくてよかった。