にんげんドキュメント

仕事に煮詰まって気分転換にとテレビをつけたら、NHKにんげんドキュメント「ピース5歳〜日本初ホッキョクグマ哺育物語」に見入ってしまった。
母クマが育児をすることを放棄した為(というか、そういう本能が動物にも減ってきてしまっているため?)飼育員の高市さんに育てられた白いホッキョクグマのピース。人間の手によって、しかも愛情豊かに育てられたからだろう、驚くほど表情豊かで可愛らしい小熊だった。それがあれよあれよという間に大きくなっていくさまも面白かった。
去年編集者Mさんと話していたとき「なぜ子ども向けのお話には、クマが主人公のものが多いのか」という話題になったことがあった。なるほど、他の動物に比べて、クマが主人公のお話ってダントツに多いかも。犬や猫は別として、でもだってクマって人間にとってそれほど馴染み深い動物とも思えないのに。そのときMさんが言っていたのは、「クマが比較的人間に近い身体つきをしているように見えるからではないだろうか」という説だ。そりゃ四つん這いになっていたらそうでもないんだけど、立ち上がったところを見ると、猿やゴリラよりもよっぽど、遠目で見れば人間に近く見えるんだって。
実際ピースが二本足で立ち上がっているところを見ると、そんなような気もしないでもなかった。
でもそれは、ピースがとても人間(というか、飼育員の高市さん)に近いところにいるクマだからなのかもしれない。
クマが出てくるお話といえば、まっさきに浮かぶのは神沢利子さんの「くまの子ウーフ」だなあ。挿し絵を担当した井上洋介さんの描くウーフ像は、動物のもつ野生と、その一方で人間的な親しみやすさと子どもらしいかわいらしさをも兼ね備えるとても魅力的なものだ。
それからなんといっても忘れられないのは松谷みよ子さんのモモちゃんシリーズに登場する、”おいしいものの好きなくまさん”だ。モモちゃんとあかねちゃんて、冷静に読むとかなり現実的なお話なのだけれど、そのなかにあってくまさんはオアシスのような存在だった気がするなあ(うろおぼえなんだけど)。くまさんには、女の子の夢がいっぱいつまっていたような気がする。森の中の一軒家、おいしいもの、やさしさ。