T&D 猫の皿

むむう。
いやすごく面白かったんだけど、こうやって竜二のアイデンティティと落語とが絡んでくると、どうも竜二の人物像がぼんやりしてくるように思ってしまう。
スタッフが皆揃って「岡田君の役は難しいから・・・」みたいな物言いをしているのを雑誌で読んだけど、確かに難しいと思うんだけど、でもこれ、宮藤官九郎の脚本そのものにも、竜二については迷いがあるんじゃないのかな?
だって十代の頃から天才の呼び声高く、年長者を30人抜きの真打ち昇進の話があるような天才で、途中まではさぞ自信満々な人生を送ってきたであろう竜二が、今回の岡田くんのように女の子にあんな迫り方をするだろうか?出会ってから半年手も握らず、ようやくチューもして毎日デートしているのにそれ以上先に進まないうえに、笑わせるたびにキスをせまるって、その行動はあんまり天才ぽくないと思うのは私の先入観が強すぎるかな。でもそれにしたって、竜二の行動はいちいちちっちゃい感じだ。
宮藤官九郎の描く竜二は、落語のパーツ以外は確かに岡田准一を想定して書いているように思うんだけど。まどろっこしくて面倒臭くて、あんまりもてない男の子の役は、確かに岡田君がやったら面白そうと思うのだ。でもそこに、落語の天才っていうパーツだけ、とってつけたように浮いている気がする。
竜二を落語の天才にしてしまったばかりに、そしてそれを岡田君が演じているばかりに、書きたいことの筆がぶれていやしないのかな。
とはいっても、冒頭にも書いたとおり今回すごく面白くて、細かいところでもいちいち泣かされた。小竜が褒められるのを聞いて喜ぶさゆりちゃんとか、「家族じゃないなんて言うな」と叱られて素直に「お母さん、すみません」と謝る虎児とか、嬉々として弟に一発ギャグを教えるどん太とか。また、竜二が舞台上で落語をすることを決め虎児と睨み合うシーンは「ああ、これ・・・これだよ・・・」と痒いところに手が届くというか、胸がすくようなかっこよさだったし、その前に過去の竜二が父親を馬鹿にされてキレるシーンは、彼の落語と父への愛情の深さと心の傷の深さが伝わってきて、なおのことあとにつながる舞台のシーンが痛かった。
それにつけても、高田先生と荒川良良が出てくるシーンはどこも本当におかしかった。「マニアであってオタクではないっ!」って、そうそう、筋金入りのオタクの人ってその言葉にこだわるんだよね・・・・。高田先生のつっこみでは、「うまいっ。なにがうまいって、全然かかっていないところだよね。」ってところが好き。この高田亭馬場彦って、本人そのままだね。
わりに簡単に竜二が落語をはじめてしまったので、ここからの展開、もうひとひねりあるのかな。楽しみ。