「花よりもなほ」

花よりもなほ」を見てきました。
是枝監督の作品を見るのは「幻の光「ワンダフルライフ」についで三作目です。監督の映画は(私が見たかぎりでは)いつも画面が寒そうなのですが、だからこそ、日がさしたときの光のあたたかさが目にしみて、ほっこりとひなたぼっこをしているような気持ちになれるのだと思います。「花よりもなほ」も、まさにそんな映画でした。
エンドロールを見ていて初めて知ったのですが、今回の映画も葛西薫さんがかかわっているんですね。あのタイトルバック(?っていうのかな?)、地味ななかに明るさがあって、それに美しくて、好きです。この映画らしい。

とにかく面白かったです。
石橋蓮司が出てくるあたりで一度泣きそうになりました。お父さんがあだ討ちを遺言してくれたから、宗佐はおさえさんに出会えたんだよ、と示唆するところ。剣の腕はからきしだめで、おそらく出来の悪い息子と言われながら育った宗佐さんが、父親がわざわざ自分に「あだ討ちしてくれ」と遺言してくれたことをとても大切にしていたこと、でもどうしても出来ないこと、それをまるごと肯定してくれるシーンです。
寺島進と碁を打ちながら「父に教えてもらったことは剣術だけじゃなかった」と宗佐さんが気づく場面にも胸をしめつけられました。岡田准一さんの表情にほろっとさせられるのです。(また、このときの寺島進の、宗佐さんとの距離感もとても良いのです)
宗佐さんがあだ討ちをしないことを決意したあとの決着のつけかた・・・キムニールヤングを死体に見立てた劇中劇や、仇である浅野忠信との場面・・・も、宗佐さんというひとがただ優しくへなちょこなだけではなく、人生を生き抜いていくだけの賢さとタフさを持っているひとなんだということがわかって、とても胸のすくものでした。
画面が美しいのはやはり是枝監督ならではだと思いました。「幻の光」を見たときはあんまりにも綺麗にはまりすぎていて、実はちょっと息苦しくなったのです。「花よりもなほ」はもうすこしゆるやかで、それでもちょっとしたカットの構図にハッとさせられ、是枝監督の画面の切り取り方はやはりとても好きだと思いました。
キムニールヤングが空を見ながら「夜がきたよ」と言う場面(これ、オジーみたいですよね)、屋根の入り方、屋根と空との配分、そして空の色がとても美しく、とてもいい場面でした。
色々なところで書かれているけれど、脇の方々がとても魅力的で、特に女性陣はどのひとも本当にかわいらしく、綺麗で、また適材適所で、いやそれはもちろん男性陣もなんだけど、ひとりひとりについて賞賛したい気持ちでいっぱいですが、それはまたの機会に。でも古田新太についてひとことだけ、このひとはものすごく色っぽいひとなんだなと思いました。立ち姿がとても美しいし、着流し風の着物がとても似合っていました。
あと、こんなことを書く必要はないのかもしれないけど、岡田君について。
ファン目線で見てしまうので、どうしても冷静じゃないなあと自分で感じてしまっているのだけれど、途中までは「可もなく不可もなく・・・?」という気持ちで眺めていたのだけれど、物語が進むにしたがってだんだんひきこまれました。岡田君の優しい雰囲気が身終わったあとに印象に残る作品で、それがなにより嬉しいことでした。歌舞伎風メイク(?)がとても似合って面白かった。

また行きます。きのうは急いでいたので(思っていたより上映時間が長かった)パンフレット等買えなかったので、次はちゃんと買いたいと思います。