月館の殺人

綾辻行人原作 佐々木倫子漫画 『月館の殺人』上下巻を読みました。
綾辻行人さんの作品は岡田君の影響で読みはじめた(と言っても、3冊程度しか読んでいないのですが・・・)のですが、今回のこの佐々木さんとのコラボレーションは、大変魅力的なものに仕上がっているのではないでしょうか。
正直なところ、普通の推理小説として読めば、「まあ、こんなものかな」感がないわけではありません。最初から怪しいひとがやっぱり犯人であったり、殺人方法に疑問が残ったり。
しかし今回のこの本に関して言えば、殺人そのものについてよりも、漫画という表現でしかできない大掛かり(?)なトリックでもって軽快に楽しく読者を欺いてくれていて、それは、実に綾辻氏らしい斬新さだなあと思います。(伏線が、それは見事に絵の中に表現されています)
ちょうど、デビュー作(?ですよね?)である『十角館の殺人』が、小説という媒体ならではの、それは鮮やかなトリックであったのと同じように。
これは佐々木倫子さんの画力の高さがあってこそ実現したものですよね。
綾辻さんらしい荒唐無稽(?って表現していいのかな・・・)な設定が、佐々木さんの精緻な絵によって見事に再構築されています。
ところで、このふたりの世界はそもそもはとても違うものだと思うんだけど、でもこのまざりっぷりがなんともいえずに気持ちがよくて、綾辻さんの残虐かつドロドロな世界が、佐々木さんのとぼけた表現でもって、妙な味わいを醸し出していて、面白かった!
鉄ちゃんに関するさまざまな情報も、興味深いです。
綾辻さんは別に鉄ちゃんじゃないらしいので、本物の鉄ちゃんがこれを読んだら、一体どう思うんだろう??