ヘンリー・ダーガー展

原美術館で開催中の「ヘンリー・ダーガー展」を見てきました。何年か前にスパイラルでも展示されていて、そのときすこし話題になっていたんですよね。あまりよく知らなかったのですが、奇妙にそそられるポスターに惹かれて見に行ってきました。
とても凶暴な絵でした。
理不尽な残酷さ。少女の顔を持った、しかし醜悪な形をした生き物。ある種の満たされない性欲。咲き乱れる花々。どこかしら歪んだ危ういバランスで同じポーズをとる美しい少女たち(シャムの双子にも、増殖しているようにも見える)。それらが、極彩色の画面の中に、偏執狂的な律儀さで語られている。
とても美しい絵なのです。でも一方で(だからこそ美しいのだけれども)むき出しの凶暴さが細部を支配していて、見てはいけないものを見てしまった気持ちになる。
いわば妄想の王国なのですが、このむき出しの凶暴さを、今の自分にはとても受け止められないなあと思いました。例えるなら、私はエガシラ2:50が苦手なのですが、エガちゃんを見たときのような辛さです。いや、でも怖いもの見たさで最後まで見ましたが。
ヘンリー・ダーガーは81歳でこの世を去るまで、天涯孤独の人生を歩んだ人です。ほとんど誰にも会うこともなく、誰にも見せるつもりのない、15145ページにも及ぶ長篇の物語を11年に渡って執筆し、その後、その物語を題材にした絵画の制作にとりかかるようになりました。この膨大な作品群は、晩年になって、彼の住んでいた家の大家さんであった高名な工業デザイナーによって見い出されることになりました。
何故か私は、最初ヘンリー・ダーガーを女性だと思って展示を見ていたのです。ヘンリーというくらいだから、明らかに男性だと思うのに。何故かぱっと見の絵の印象で女だと思い込み、女の人の絵にしてはなにかが腑に落ちない・・・とそんな気持ちで見ていたのですが、あとからきちんとキャプションを読んだら、なるほど、男性でした。