佐伯祐三と佐野繁次郎 森田君と三宅君

神奈川県立近代美術館葉山で開催されていた(20日まで)「パリのエスプリ 佐伯祐三佐野繁次郎」を見てきました。
佐野繁次郎は、佐伯祐三が亡くなったあとに絵画活動をスタートさせたとのことですが、ともに大阪で生まれ育ち、子どもの頃からの知り合いだった(年齢は二歳差)というふたりの、絵画における深いかかわりに焦点をあてた展覧会でした。

佐伯祐三の絵には、やみくもに人を惹き付ける力があるなあと思います。とにかく存在感があるし、荒々しいひと捌けがどうしようもなく本質的な形をずばりと表現しているのには感動せざるをえないし、ある種の通俗性にも繋がるような重い悲しみがあって、そして、なにより色っぽいんだな。また、今回すごく思ったのは、色のセンスが抜群なんだなあ、ということでした。絶対に古びない、緊張感のある色彩の響きあいが、とても気持ちよかった。
佐野繁次郎の絵は、佐伯祐三のあとに見るとだいぶ平和で穏やかな感じがするんだけど、とはいえ全然別の魅力を放っていて、これもまた楽しかった。歳をとるにしたがってモチーフの形がどんどんおかしく・・・こどもっぽく?・・・・・自由になっていくんだけど(たとえば、プロポーションが火星人みたいになっている人物とか・・・)、でも形がどれだけおかしなことになっても、色が綺麗なので、非常にすっきりと後味のよい絵になっているんだなあ。このひとの塗る色には、知性のある明るい温かさと、独特の軽さがあって、だから何を描いても、どれだけおかしな排他的な形になっても、人なつこっい温かさをもった絵に仕上がる強みがあるんだなあ。
佐野繁次郎もまた、佐伯祐三に負けず劣らず、色彩に関して天才だと思いました。

V6に例えてみれば(・・・いったいどこにそんなことをする必要が?)、佐伯祐三は森田君、佐野繁次郎は三宅君だな、と思いました。


佐野繁次郎はでも、絵画作品よりも、デザインワークの展示のほうが面白かったです。独特な描き文字を使ったデザインワークは、本当にモダンだし、可愛いし、こっくりとした味わいがあって、とても好き。
そういえば、装画の原画にそのまま直接、文字を描きこんでいました。こんなやり方、今じゃ考えられない。よっぽど技術に自信がないと、そんなこと出来ないのだ。見ごたえありました。