「ハチミツとクローバー」

テレビをつけたら「ハチミツとクローバー」をやってました。櫻井くん主演の映画のほう。
漫画もドラマもアニメも見たことがなくて、どんなお話なのかほぼ知らないし興味もなかったのですが、テレビをつけたときに蒼井優ちゃん演ずる女の子がミナ・ペルホネンのワンピースを着ているのに目がとまり、なんとなく気になって、そのまま見続けました。綺麗な映画でした。


映画公開当時に雑誌かなにかで、蒼井優ちゃんが演じる美大生(天才という設定)の描く絵は、実際にはマヤマックスさんが描いたものだという記事を斜め読みしたことを思い出しました。
マヤマックスさんは本当に素敵なアーティストだけれども、映画の中で見るその絵は、20歳そこそこの女の子が描いたにしては洗練されすぎているというか、なにかがすごく違うと感じてしまった。映画やドラマの中の小道具である美術作品にあれこれ言うのは間違っているとは思うのだけれども・・・でも、この映画に関して言えば、正面から堂々と絵を映し出していたし、なんと最後のカットがマヤマックスさんの絵だということもあり、たぶん絵自体が、映画の中でも大きな役割を担っているというか、小道具としてではなく、絵も俳優と同じような位置づけで画面の中に存在しているんだと思ったのです。それなのに、堂々と映しているその絵が、なんか違う・・・と感じさせられてしまったのは、絵が悪くない・・・というか素敵なだけに、なんだか残念なことだなあと思いました。
美大生のお話なのに、絵が、もうちゃんと何年もそれで仕事をしている人の洗練があって・・・垢抜けすぎというか、無駄が無さ過ぎというか、達観があるというか・・・ううーん、若い感じがしないのかな。確かにこの、はぐみという女の子はこんな絵を描くのだろうという説得力がないわけではないのだけれども、なんだかとてもちぐはぐな感じがしてしまった。


難しいのだろうなあ。マヤマックスさんはおそらく、自分に正直な絵を描いたのだろうと思う。映画や、はぐみという女の子の絵だということを意識していなかったわけじゃないだろうけれども、でも、誰かを演じながら描いたわけではないだろう。
映画の中では、そのために描こうと思うと、画家が、正直でも不正直でもボロが出る。と思う。でも、ぴったりの正解なんてありえないのだろうなあと思うしなあ。ううーん、でも一方で、今回のマヤマックスさんのような仕事って、俳優さんだって同じような構造のことをやっているのじゃないだろうか。自分に正直でありながら他人になりきるってことではないのだろうか。


ただ、絵に感じたちぐはぐな感じは、旅行先の海で蒼井優ちゃんがミナ・ペルホネンのワンピースを着ていることにも現れている感があって、おしゃれだし可愛いし、着こなしているし、確かにこの女の子のキャラクターにもあっているんだけれども、なんかちょっと・・・洗練されすぎているなあと・・・そういう要所要所の洗練されている感が、なんとなく映画全体をさらさらさら感じさせているなあと、ほんとうにほんとうに微妙に残念な感じがしました。みずみずしくて気持ちのよい映画だっただけに、本当に本当に、それがちょっと残念というか・・・


櫻井くんはニュートラルな位置とは何なのか?を自分の中で把握しながら演じているように見えて、俳優としてもよい仕事しているなあと思いました。
こんなみずみずしい映画の、こんなふうに普通の男の子の役をやっているオカダさんを見たかったな。でも、年齢的に、もうそれが難しくなってしまったことに思いがいたって、寂しくなったなあ。