阿修羅のごとく

再放送していた『阿修羅のごとく』を三夜連続で見ました。
怖い話といえば怖い話だし、特に救いはないし悲惨な話ともとれるけれども、かえってそれが見ている私にとって救いになるような…誰しも孤独だし、心の中に鬼を抱えているのだと思うと、すこし気が軽くなる、そんなドラマでした。
父親が浮気していたってことがここまでショッキングに扱われるのかな?って点が、ああ何十年も前のドラマなんだなというふうに感じたけれども。それ以外は、古びたところが一切無いように感じました。
適材適所の配役が胸のすく素晴らしさで、それだけでお腹がいっぱいになりました。どの女優さんも綺麗で大人っぽくて、眼福だったなあ。


加藤治子が、もうあとコンマ数ミリなにかが違ったら、嫌悪感を覚えてしまいそうなほどに艶っぽくて、びっくりした。こんな艶っぽい女優さんだったんだ。いや、今も艶っぽいけど、当然かもしれないけど今よりずっとずっとなまめかしい。
八千草薫は上品におっとりと美しかった。そんな中にかいま見せる生々しさ(夫の浮気に対する態度、不倫をしている姉との一触即発な場面)にドキッとさせられた。このとき47歳だったそう。トレンチコート(じゃなかったかな?)に小さなハンドバックをかかえ、ハイヒールをコツコツといわせて出かける姿が本当に綺麗。
加藤治子八千草薫、長女と次女の間柄なのだけれども、ふたりがとても対照的で、どちらもがお互いの顔色を読んでいる関係性が、いかにも女きょうだいという感じで面白かった。


それで、八千草薫の夫役の緒形拳が、また素晴らしく魅力的で。典型的にしようもない夫の役なのだけれども。妻とその姉妹たち女性陣に男1人まざったときの距離感の取り方、立ち居振る舞いのバランス感覚にうっとりとさせられました。踏み込むところと踏み込まないところの絶妙さ加減に。「このひとしょうもないなあ」っていう人物造形ではあるのだけれども、それを緒形拳が演じていると、その演技が、見て楽しいって感じる。しかも、まだ若くてギラギラと脂ぎってるのですよね。そうだ、緒形拳て、こういうギラギラした俳優さんだったんだよなあと、思い出しました。