胡桃の部屋

向田邦子の原作をテレビドラマ化したものだけれども、これは過去にも、いしだあゆみ主演でドラマ化されているらしい。


1話は面白いと思ったのだけれども、正直それ以降、わたし全然のれなくて。意地で最後まで見続けたような感じだった。


原作が収められている『隣の女』の文庫本を持っているけれども、あれは、テレビドラマ化されることを想定して描かれた小説なのかしら?向田邦子らしい、男女の生々しさを包み込んだ家庭の話で、エピソードのどれもがやりすぎないところで筆を止めてあって、それが良かった。でも、今回のこのドラマに関していえば、私にとっては全体的に全て「やりすぎ」と感じてしまって、見ているのがちょっときついと感じてしまったなあ。悪意ばかりを強く感じてしまって、見ていて疲れてしまった。お父さん(蟹江敬三)に関しては、「男って、ずるいな」ってところばかりが印象に残ってしまったし、弟に関しては「男って馬鹿だな」という印象が強い。『阿修羅のごとく』と話や演出が混ざってしまっているようなところも、かえって詰め込みすぎなんじゃ?と感じて、それがあまり効果的に受け取れなかった。
胡桃の部屋」という言葉の意味にしても、やりすぎなくらい説明されているように感じてしまって。もうちょっと自然に会話の中に出てきたらよかったのにと思うんだけど…


ただ、原田泰造演じる都築は魅力的で、この都築の「男のずるさ」に関しては、素直に受け入れることができた。うん、そうだよ、いろいろなこと、しようがないんだよなって。一方で、蟹江敬三のエピソードを私が消化できなかったのは、単純に台詞もほとんどなかったし、蟹江敬三ほどに大人な男のチャーミングさを感じ取るには、私自身が未熟すぎるの?などと思った。わたしが色々と思い上がっているというか、生きることの重さを実感せずにのうのうと暮らしているから、経験不足で想像力が働かないのかな、とか。とにかくうまく共感できなかった。同棲相手となる西田尚美に対しても、立体的な人物像を自分の中に描けなかったし。


…と、文句ばかり書いてしまったようですが、いや、面白くなかったわけではないんです。
愛憎を乗り越え、ひとつの境地に達し、分解し、そこから新たな家庭の物語がはじまってゆく。家庭って、それを持っていないひとにとっても、見方を変えれば、人生そのものなのしれないなあ。だって全ての人間は(家庭とは呼べないような形態もあるにはしても)男と女の家庭から産み出され、その因縁を断ち切ることは絶対できないのだから。面倒臭くて、怖いことだ…という、とても重いものをドラマから受け取った気持ちになりました。


原田泰造の奥さんの役で、市川準監督の『東京兄弟』の粟田麗が出てた!演技しているのを見るのは久しぶりだったー
あの可愛らしい子が、こんな立派な(?)奥さんに!