『毎日が夏休み』

金子修介監督作品。夏前だかに録画してあったものを、最近見ました。

びっくりした。原作は、もう何十年も前に読んだっきりなんだけど、あんまりにも原作に忠実な映画でびっくりしました。確かめたわけじゃないけど、科白も「ほぼ原作そのまま」なくらいの勢いで同じですよね?


主人公スギナの、さいごのモノローグが好きだ。
『考えてみればあの日私は、まぶしい永遠の夏休みを手に入れたのだと思う。
計画する 実行する 失敗する 出会う 知る 発見する
冒険とスリル 自由とよろこび
まさに夏休みそのものだ』
おとなになること、身の丈にあった幸せを手に入れることについて、とても真摯に向き合ったお話。だけれども、そのまっとうさ、誠実さが、まぶしく感じたなあ…。


スギナ役の佐伯日菜子はこれがデビュー作なのですよね。美少女すぎてちょっといびつなくらいなその容姿が、スギナという屈託のある、でも純粋な女の子に、見ていてどんどん馴染んでいきました。びっくりするほどの棒読み科白なのですが、その突拍子もない抑揚とぎくしゃくとした表情が、可愛いかった。


スギナの義父を演じるのは佐野史郎。ハンサムで女性にもなかなかモテる人…という設定なので、原作を先に読んでいた私にとってはとても意外なキャスティングでした。ひょうひょうとマイペースなそのたたずまいはこの少女漫画の世界にビジュアル的にもハマってなくもないし、ベターな人選と思うのだけれども…でも、やっぱりすごく意外で、頭の中で『毎日が夏休み』というお話自体を軌道修正しながら見る必要がありました。
監督がもし女性だったら、このキャスティングは思いつかないんじゃないだろうか。男性である金子監督がこのお話の中のどこに自分を置くかと考えたとき、それはやっぱり、同じ男性であり年齢も近い義父にだろう。義父は、監督にもっとも近い存在だろうし、感情が発露する出口でもあって、だとしたらそこに、監督にとって感情移入しやすい俳優さんが配置されるのは当然のことで、だからこそ義父を演じるのは、イケメン感のある俳優さんではなく、ちゃんと男の人のリアルな重さ(太さ?)を内包している様子が透けて見える(でも生々しさは消している)佐野史郎だったんじゃないかな、と。なんとなくそんな感じがしました。
この映画の中の佐野史郎って、ある種の駄目さや情けなさ醜さを、生々しさのない強さにくるんと包んで、だけれどもあくまで普通に普通に、存在している。この弱さと強さに見ているひとは希望を抱くんだろうし、監督自身も、佐野史郎を通して、幸せを受け入れることを自分に課し、救われたかったんじゃないだろうか。


大島弓子の漫画といえば『秋日子かく語りき』が、NHK宮崎あおいちゃん主演であったことをふと思い出しました。あれもう一回見たいな〜。