是枝監督

ゴーイングマイホーム』を見てると、こどもの動きって愛らしいなあって、ついじっと見入ってしまう。ただ単に「歩く」とか「走る」とか「扉をあける」あるいは「じっと見る」という動作だけど、そのなかに熱心で健気な静謐がある。
是枝監督は、動き の中にこめられた 無 を切り取るのが丁寧だなあと思う。『花よりもなほ』のコメンタリーの中で、進之助(宮沢りえの息子)が河原を歩くシーンを見ながら「(河原が歩きづらいせいで)ひざをあげながら歩く、この歩き方がいいんだ。好きなんだ」とかなんとか語っていて、それを聞いた古田新太は「是枝監督、絶対ショタコンだよ〜」とからかっていたけど。あれって、歩くという動作に熱心に健気に集中している、進之助の 無 が現れているんだなって思う。ああ、監督はこの 無 の瞬間を愛しているんだろうなあって思う。なにものでもない、ただ単にそのひと が そこにあるだけ という瞬間。



映画『空気人形』で、ぺ・ドゥナ演じる空気人形から、シューッと音をたてて空気が抜けていくその動きが、哀しくて醜くて綺麗でエロだった。ただただ空気が抜けていく、その動きに、心を打たれた。とめどもなさ、非力さ、それとは裏腹な、彼女の絶望と恍惚は、『ゴーイングマイホーム』の萌江ちゃんや『花よりもなほ』の進之助の動作の中の 無 と対極にあるようだけど、でも、そこにどうしようもなくそのひとの本質が現れてしまっている、というか、なにものでもない、ただ単にそのひと が そこにあるだけ という意味で、もしかしたら同じなのかも。って、つらつらと考えた。きのう。


ところで凶暴じゃない新井浩文って初めて見た気がするけど、かっこいいなー