マリオ・ジャコメッリ

人生で三度目の志茂田景樹の目撃。なんなのだ。



マリオ・ジャコメッリ写真展を見ました。
がつんときました。衝撃を受けた。白と黒のコントラストが強調された写真をポスターで見て、単純に「美しいな」と惹かれて見た写真展でしたが、会場に足を踏み入れて最初に並んでいたホスピスの作品群を見て、心をえぐられてしまった。現実の写真なのに奇妙な物語の中の1ページのようで、それでいながら本当に本当のことをつきつけられると思った。どこか知らない場所、だけどいつか知っていたような場所(静かで、悲しくて、あたたかくて、うしろめたい)に連れていかれる感覚。

ときどき写真と写真の間に、写真家本人の言葉や、彼が引用したのであろう詩が添えられているのですが、それが、とてもよかった。


見ながらふっと、是枝監督の『幻の光』を思い出しました。公開当時に一度見たきりで、既にどんな話だったかさえ覚えていないのだけど。あの映画(その次の『ワンダフル・ライフ』もそうなのだけれども)を見ているとき、映し出されるのはとても綺麗な景色なのに、何故だかずっと息苦しかった。高架下を自転車で走っていく浅野忠信。むこうの明るい景色と真っ暗な高架下のコントラスト。江角マキコ内藤剛志が裸で寝そべる部屋には、何もなくてただ明るい日差しが差し込んでいるだけ。日差しが明るい分、影の色が濃くて。


図録が欲しくて、でも写真集にしてしまうと、会場で見た写真の印象と、手触りも、なにかちょっと違うもののように感じてしまい、代わりに、作家の辺見庸がジャコメッリについて書いた本を買いました。