ワトスン

グラナダ(ジェレミー・ブレット)版シャーロック・ホームズの冒険は、原作に忠実な映像を目指して作られ、実際その通りに出来上がり、原作通りという意味ではおそらく今後これ以上のホームズは出来ないだろう、最高のホームズと言われているそうです。
確かにあそこまでされてしまったらもうその方向ではやりようがないだろうし、あるいはまた、あれを超える映像化は色々な意味で今はもう無理なのかもなと思う。たとえばホームズを演じる俳優ひとりをとってみても、有名なチョコレート会社の経営者一族に生まれ何人もの使用人が働く大きな家で育ったジェレミー・ブレットは、たぶんホームズの時代の大英帝国の名残を身にまとった最後の世代の俳優だったんじゃないかなと思い、その空気感は今の役者さんではなかなか出せないんじゃないだろうか…って、…想像だけど。


でも、グラナダ版とは別の意味で、よりエモーショナルなうねりの中で登場人物を掘り下げ、えぐった描写でわかりやすくキャラクターを提示をするという意味では、今シーズン3まで放送されている『シャーロック』は素晴しいですよね。ワトスン、マイクロフトの描かれ方には、「頭のいいひとというのは、こんなふうに原作の登場人物を読み解くのだなあ!」と、感動してしまった。
特にワトソンの描写は秀逸だなあと思って。彼の過去について、出てくるエピソードは原作そのままなんだけど、こういうふうに表現されることによって、ワトスンが何故ホームズを選んだのか、ホームズの何がワトスンを惹き付けたのか、このドラマを見ていて改めて考えさせられ気づかされました。ワトスンはそもそも軍人であり、かつまた、孤独な魂をかかえた人であり、闇を持っていて、だからこそホームズに惹き付けられたのだと。