「繕い裁つ人」

繕い裁つ人池辺葵

金曜日のあさイチで中谷さんがゲストで出演してこの映画の宣伝をしていたらしい。それは、私は見ていないんだけど。友人から「原作の漫画が面白そうだったけど、知ってる?」と聞かれ、調べてみたらネットで1巻だけ無料で公開していたので読み始め、いま4巻まで読んだとこ。

面白い。創作を仕事にしている人が普通に思い悩むことを、普通に普通に真面目に素直に描いた作品ですよね。創る上でのリアルな心と行動の揺らぎを丁寧に紡いでいて、そこに、ある種の理想というか、「こうだったらいいな」っていう願望を織り込ませてあるのが、読んでてとても気持ちいいなあと思った。

この漫画で一番惹かれたのは、絵の魅力です。好きなタイプのうまさ。洋裁をしっかり描く漫画だけあって、服を着た人物の造形にすごく説得力があると思った。いや、顔に関しては、ちょっと好みの別れるところだろうなあと思うんだけど(私は好きです)、洋服を着た肉体を魅力のある線で描くひとだなあと思う。服の下に肉体があるってことを見るひとにしっかり感じさせるデッサンで、そのうえでおおらかでユニークな魅力があるなあって。著作が少ないようだけど、まだ若いひとなのかなあ。こんなふうに形としての肉体を描けるなら、これを武器にして、もっと冒険もできそうな絵だなあと思う。


漫画にあんまり詳しくないけど、絵の上手い漫画家さんてたくさんいて、でもひとくちに「うまい」って言っても、色々な方向の上手さがあって、「絵が上手いですよね」って認められやすい漫画家さんもいるし、そういう方向ではそれほど評価されてない…されてないってこともないだろうけど、そこをとりたてて言われない漫画家さんもいる。
最近の漫画家さんで、「わあ、このひとはものすごく上手だなあ」と思ったのは、蟲師漆原友紀さんで、こんなふうに「自然」というか「世界」を絵にすることができるんだなあとすごく感動しました。蟲師のあとは作品はないのかしら…?