立原正秋『冬の旅』

駅前のスーパーで古本市が開かれていて、なにも買うつもりなく通り過ぎたのに、遠目からなんとなく青い表紙が目にとまったので戻って買ってしまいました。あと題名が好きだと思ったので。50円。

面白かった。愛憎と生きてゆくことの孤独、それらについての因果応報的な理をわかりやすく…洗いたてのシャツにアイロンをかけてぱたんぱたんと折り目をつけてたたんでいくがごとくに気持ちよく平易に解説してくれる…みたいな小説だと思いました。変なたとえですが。
愛されたい認められたいという思い、でもその答えは自分の中にしかないのであって人によってもたらされるものではないということ、誰しも傷と孤独と弱さをかかえ生きているであろうこと。若くしていろんな意味で多くのことが見えてしまうひともいるし、いつまでたっても見えないでいるひともいて、でも誰しもひとは未完成だという意味では一緒なのだということ。
ただ、この主人公の男の子は、ちょっと出来すぎてる上に態度が大人で腹が立つ。可愛くないー それが彼の弱さでもあり、一週回って可愛いのだとは思うんだけど。


木下恵介監督でドラマ化されているようで、主要登場人物のうちのひとり、主人公の義兄であるどら息子の役を田村正和がやってたみたい。主人公はあおい輝彦。機会はないだろうけど、もしも叶うことなら見てみたいな。